佐久間内科小児科医院 二本松市,二本松駅 内科,小児科,心療内科

発達障がい

もくじ

ページ作成にあたり参考とした文献

1)広瀬宏之.発達障害にともなう二次障害とは?.チャイルドヘルス2011 Vol14 No11
2)平岩幹男.自閉症スペクトラム障害―療育と対応を考える.東京:岩波書店;2012
3)奥山眞紀子・氏家武・井上登生.子どもの心の診療医になるために.東京:南山堂;2010
4)吉田友子.高機能自閉症・アスペルガー症候群 「その子らしさ」を生かす子育て.東京:中央法規;2014
5)岡田尊司.子どものための発達トレーニング.東京:PHP研究所;2017
6)NPO法人つみきの会【編】.ABA実践マニュアル 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法.東京:合同出版;2015
7)上林靖子監修 河内美恵他編集.発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル.東京:中央法規;2009
8)上林靖子監修 河内美恵他編集.保育士・教師のための ティーチャーズ・トレーニング.東京:中央法規;2016
9)奥田健次.メリットの法則 行動分析学・実践編.東京:集英社;2012
10)杉山尚子.行動分析学入門-ヒトの行動の思いがけない理由.東京:集英社;2005
11)広瀬宏之.発達障害支援のコツ.東京:岩崎学術出版社;2018

 

「発達障がい」とは

 横須賀市療育相談センター広瀬宏之先生は、発達障がいを以下のように定議されております。
「人が生きていくのに必要なさまざまな能力のうち、いくつかの能力の発達が遅れ、その結果として日常生活のなかでうまくいかないことが生じている状態」。

 発達障がいは、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、学習障害などをさす場合がほとんどです。知的発達の遅れのみの場合は「精神遅滞」として、発達障がいとは分けて対応されることが多いようです。
 下図に、代表的な発達障がいを示し、以下にそれぞれの特徴を簡単に記します。

佐久間内科小児科医院 発達障がいについて


 一人の子どもに、何種類かの発達障がいが重複してみられることもあります。それぞれの発達障がいの境い目がはっきりしているわけでもありません。
それ故に、一人一人の子どもが必要とする支援を、いろいろな角度からみていくことが大切なのです。

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精神発達遅滞

 知的発達の遅れがあり(知能指数70以下)、生活全般において適応能力が乏しいと判断される場合を指します。必要に応じて、個別的な支援や指導が受けられる教育環境の整備体制が重要となります。

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自閉スペクトラム症

 人との関わり方ややり取り(=コミュニケーション能力)、集団の中での行動(=社会的適応能力)、切り替えや応用力やこだわり(=想像力)の3点に難しさがある場合です。
 コミュニケーション能力に難があるため、知的な部分や言葉に遅れがみられることがあります。そのため、発達知能検査では数値が低めに出る傾向があります。しかし、数値だけで能力の全てを判断すべきではありません。その子の持つ「得意な部分」を見つけ出すことが大切です。
 アスペルガー症候群や高機能自閉症では知的障害を伴わないか、極めて軽度、逆に高い知的レベルのケースもみられることがあります。自閉症といいますと、以前は「広汎性発達障害」としてひとくくりにされてきましたが、いろいろな症状や状態があることがわかってくるにつれ、最近では「自閉症スペクトラム」という表現が用いられるようになりました。スペクトラム(Spectrum)とは「連続体」という意味です。基本的な特性は共通する点があるにしても、それぞれの子どもが全て同じ症状・状態を示すわけではなく、多種多様な「広がり」を持つという意味での「自閉スペクトラム症」なのです。

 コミュニケーション障害や社会性障害により、他人の気持ちや暗黙的なルールの理解が難しく、集団行動が苦手などの特徴がみられます。先の見通しがつきにくく変化や変更への適応が苦手、特定のモノに対する強いこだわりや反復的な行動、興味やパターンが限られているなどの特徴は、想像力の障害によるものです。
 物事の特有の解釈や感覚の受け止め方など、その子ども本人の発達上の特徴を周りの大人たちがきちんと理解し、本人の目線で対応することや、混乱を少なくする工夫が何よりも大切となります。

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カナー型

 古典的な自閉症と云われるタイプです。言葉の遅れがあったり、人への関心がなく、自分だけの世界に没頭し、たとえ親であっても干渉されることを極端に嫌います。

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アスペルガー症候群

 言葉の遅れが少ないか、まったくみられないタイプの自閉症です。発達の凹凸が激しく、○○は出来ないが△△をさせると素晴らしい力を発揮することが特徴の一つです。相手の気持ちを汲み取ることや、自分の想いの伝え方が一方的であったりするために、対人関係でトラブルとなることもよくみられます。

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注意欠如・多動症

 すぐ気が散る、忘れっぽいなどの「不注意」、落ち着きがない、飽きっぽいなどの「多動」、突然何をし出すか予測不能などの「衝動性」を特徴とします。小学生の3~5%に認められると云われ、3歳以下の子どもでは皆この傾向があります。小学校低学年では男の子に多く、主に多動と衝動性がみられます。高学年になると、女の子に不注意の形で多くみられるようになります。

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学習障害

 知的発達の遅れは認めないものの、読み書きや計算など、特定の学習過程に苦手さがあり、修学上の困難をきたすものです。注意欠如・多動症など、他の発達障がいに併存することが比較的多くみられます。子ども本人の学習パターンに合った指導と柔軟な対応をすること、得意分野を伸ばし、褒めることで自信を持たせることが大切でしょう。

 

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発達性協調運動障害

 年齢や体格に比べ、不釣り合いに思えるほど身体の動きが不自然な状態を意味します。
 字を書くなどの「微細な運動」が苦手な場合と、走るなどの「粗大な運動」が苦手な場合があります。もちろん、両方とも苦手というお子さんもいます。
 自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症のお子さんにみられることも多いと云われています。

微細運動障害

 字を書く以外にも、ハサミを使うことや折り紙を折ったりすることも不得意ですので、「不器用」と呼ばれることが多くなります。図工や音楽など、指先の器用さを求められる場面では辛い思いを抱き、国語や書写の書き取りの時間にも苦痛を強いられることになります。

粗大運動障害

 時代遅れの言い方かもしれません。俗に「運動音痴」と呼ばれたケースが当てはまるかと思います。
 単に「走る」だけでなく、キャッチボールや縄跳び、跳び箱のような場面では、身体のバランスを保ちつつ身体を思い通りに動かすことができません。体育の授業や運動会は、最も「嫌な」時間となります。体育に限らず、日常の生活の上でも多々不便を感じることが大となります。

 微細運動障害にしても粗大運動障害にしても、できないことが本人の自尊感情を損なわないように周囲が向き合うことが大切です。これは、発達障がい全般に云えることかもしれませんが。

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情緒障害

 文部科学省では、「情緒障害とは、情緒の現れ方が偏っていたり、その現れ方が激しかったりする状態を、自分の意志ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に支障となる状態をいいます」と定義しています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/007.htm

「キレやすい」、何かというと暴言・暴力を振るう、落ちつきがなく集団行動が出来ない、人とのコミュニケーションがうまく取れず、好ましい人間関係を築くのが苦手などの問題行動がある場合などに、主に学校現場で用いられる名称です。知的能力も言葉の力も劣っているわけでもなく、実際に家庭では普通に話している割に、学校に来た途端一言も話せなくなってしまう「選択性緘黙」も、情緒障害に含まれます。
 そもそも、「情緒障害」という診断名はありません。問題行動を起こしている「状態」を指しますので、実際は自閉スペクトラム症であったり、注意欠如・多動症による落ちつきのなさであったりすることも多々あります。根底に家庭内暴力や虐待が隠れている場合もあり得ます。

 自閉症や注意欠如・多動症に限らず、子どもにとって大切なことは「環境調整」にあります。自分をコントロールすることが苦手な「情緒障害」の場合はなおさらでしょう。
 そのため「特別支援教室」を設置し、その子どもに合った環境設定を目指す小学校や中学校が最近は増えてきました。

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発達障がいと問題行動

 発達障がいとされる子どもも、発達障がいではないとされる子ども(=定型発達児)も、「落ちつきがなくなる」、「すぐキレる」など、いわゆる「問題行動」とされる困った状態に陥る場面は、多かれ少なかれ見られるものです。そのような時にどう対応すればいいか、一般的な内容は「子育て支援」のページの「発達支援」に書かせていただいた通りです。
  ここでは、問題行動がどのような理由で起きるかを考えてみます。

問題行動について

 上記①〜④が、問題行動の成因、成り立ちと云われるものです。何かしら欲しいものがある時、して欲しいことがある時、子どもは要求を通そうと、何回もしつこくせがんだり、泣いたり、極端な場合には「逆ギレ」することもあります。デパートのおもちゃコーナーで、やたら大声でがなり立てている子どもは、ほとんどはこのパターンでしょう。要求の実現です。

 好きではない科目の授業の時間になるとフラフラと席を立ち、何も言わず教室から出て行く子どもがいます。自分にとっては「嫌な時間」だから逃げようとするのも、理由の一つかもしれません。回避です。苦手とするクラスメート、教師が近づいて来た時、突然相手の足を蹴ったりツバを吐くなどの場合も、嫌いな相手からの回避と言えるでしょう。

 みんなで静かに授業を受けている時、突然大声を上げたり、意味もなく歌い出したり、ひどい場合は隣の席の子どもを突き飛ばしたりする子どももいます。教師は当然、「〇〇くん(ちゃん)、何をするの、止めなさい!」と、叫ぶか怒鳴るかします。ですけどね、それで問題行動は収まりません。むしろ、ますますエスカレートします。嬉しいんです。何十人かいるクラスの中で、自分だけが大好きな先生の注目を浴びることが。これが、注目を集めたいための行動です。

 4つめの感覚刺激とは、手をブルブル震わせると気持ちがいいとか、クルクル廻っているものに見入っているとなんだか落ちつくとか、自分の行動が快感を引き起こしている場合です。手をブルブルさせることが必ずしも問題行動に結びつかないこともありますが、学校での集団生活では「和を乱す」ことにもなりかねません。みんなで何かをしなければならない場面で、「ひとりクルクル」で困るのは周りの子どもたち、ということになります。

 発達障がいとされる子どもたちの問題行動では特に、「何故それをするのか」の成り立ちを考えることが大切と思います。必ず、この4つのうちのどれか、あるいはいくつかが当てはまる筈です。それが判れば、解決の糸口が見つかるかもしれません。見つからなくとも、その子を理解する手助けとなるでしょう。
  問題行動をただ「問題」として終わらせることなく、成因や成り立ちを見極める。その姿勢を忘れてはいけないと思います。

二次障害について

 自閉スペクトラム症に限らず、発達障がいの子どもたちは、独りでは周囲とうまく関わりを持つことが苦手です。身近にいる大人がその子を理解し、その子に合った環境をつくってあげなければ、モノや人にあたる、暴力をふるう、脱走する、自傷行為や不登校などの、問題行動を起こすことがあります。それを「二次障害」とよびます。その子なりのSOS、息苦しさを訴える「心の叫び」とも考えられます。自尊感情の低下が引き起こした問題行動に他なりません。

  二次障害そのものが、その子の本質と見間違われる場面も多くあるようです。自閉症であるから暴力的、何をしでかすかわからない。そんな風に思われている方も割とよく見受けます。大きな誤解です。
  予防のためには、教育や福祉、医療関係者と保護者との連携が重要となります。
  発達障がいの子どもとの関わりの中で最も重視すべきは、「二次障害を起こさない」ことにあると考えています。

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発達障がい支援

 発達障がいとされる子どもたちは、いくつかの能力の遅れ(=発達の凸凹)のために、環境への適応が困難となっています。環境適応がスムーズに成されるために、家庭や医療・教育・福祉に関わる周囲の大人たちが何をすべきかを考える。それが発達障がい支援につながります。

特性を見極める

 障がい支援は、子どもの特性を見極めることからはじまります。「特性」といっても難しいものではなく、簡単に云ってしまえば「その子の人となり」。いい面も悪い面もひっくるめてその子を理解し、受け入れましょう。性格や得意なこと苦手なことや趣味、ご家庭や学校生活の様子や成績を含めての諸々が、その子の特性となります。

 知的な面からの特性をみるためには「発達知能検査」が使われます。当院では2歳から5、6歳までは田中ビネー知能検査V、7歳以上になればWISC-Ⅳを行い、知的な面での観察情報としています。

行動分析学

 唐突に「行動分析学」と持ち出しては、驚かれる方も多いかもしれません。人や動物の「行動」を観察した上で判明した「理論」です。アメリカの心理学者スキナーが、動物をはじめとした膨大な実験研究から考え出しました(ページトップの提示文献9、10参照)。心理学にもいろいろな種類の手法や分野があります。私が理解した範囲では、行動分析学とは「行動」の理由を考える上で「極あたりまえのこと」を体系化しているように思います。その「あたりまえのこと」が障がい支援に役立つのです。

「何かしらの行動を引き起こす『原因』は、その行動の前ではなく後にある」が、行動分析学の基本です。上の図で示すように、何もしないで居た時に、偶然でも頼まれたのでもどちらでもいいですから、たまたまお母さんのお手伝いになることをしてみたら予想外にほめられた、とします。なんと、おやつまでもらっちゃったり。そうなると、これはもう本人としては嬉しいわけです。当然、後でまた同じ行動を繰り返そうとします。それが「行動の強化」とよばれるものです。

 逆に、「お手伝い」をしてもほめられもせず、おやつももらえなかったら、どうでしょうか。嬉しくもなんともありません。今後「お手伝い」をしようとは一切思わないでしょう。それが「行動の消去」です。
問題行動について」で挙げた問題行動に対応するために、この「強化」と「消去」の見方・考え方が有用です。

 強化したい行動であれば、その行動の後に「ごほうび」を与えます。「ごほうび」を与えることを、行動分析学では「強化子」とよびます。消去したい行動であれば、「強化子なし」とします。

 そして、上図のような対処法となります。

① 知らんぷり

 子どもの問題行動に対しては、極力「知らんぷり」を決めこみます。強化子がないことでの、「知らんぷり」による消去です。この場合、大切なことが三つあります。

消去バースト

 消去されることにより、問題行動がかえって激しくなることがあります。お母さんと一緒に入ったコンビニやスーパーで、お子さんが欲しいお菓子を見つけたとします。お子さんは買って欲しいとせがむ。お母さんは「買いません」(=消去)。お子さんもそのままでは引っ込みがつきません。さらに「欲しい」を連発します。言葉だけでなく、買って欲しいあまりに大声を出したり、お母さんにしがみついたりするかもしれません。まさしくバースト(=爆発)です。そうなると、それはもはや要求を実現させるための「問題行動」です。

 そんな局面でのお母さんの対応が試されるところです。お母さんが要求に根負けし、お菓子を買ってしまったら。買って欲しいと大声を出す行動は、お子さんにとっての強化子につながります。買って欲しいモノがある時には大声を出すという行動が強化されます。強化された行動は、その後も繰り返されることとなり、コンビニを訪れる度「これ欲しい!買って!買って!」の大騒ぎになることでしょう。

 お子さんがどれほど騒ごうとも、いったん買わないと決めたのであれば、根負けせず「買わないものは買わない」姿勢を貫くことです。

 

知らんぷりするのは行動のみ

 知らんぷりは、あくまでも子どもの行動に対してです。存在は見守ってください。見ていないふりをしつつ、実は見ている。問題行動が止まった時にすかさずほめるためです。ほめられることが強化子となり、問題行動の消去を助けます。問題行動ではない行動に移った時を、出来るだけ見逃さないようにしましょう。現実には難しいのですが、自己トレーニングを続けることで可能となります。

制止が必要な問題行動

 道路に急に飛び出す、兄弟に手を出すなど、子ども本人がケガをしたり、相手を傷つける行動の時は、知らんぷりでは危険です。制止させることが必要となります。「何やってんの、あんたはまったく!」とか、「バカ!」と感情的に怒鳴りつけるのではなく、顔を近づけ目を合わせ、「いけません」と静かに冷静に伝えましょう。怒鳴ったり力で押さえつけようとすれば、子どもは反発するのみです。何を言われても「いけません」を繰り返してください。暴れるようでしたら、抱きしめてください。家の外でも中でも同じです。
 

② 気をそらして他のこと

 正式には他行動分化強化(DRO)と呼ばれます。問題行動の原因が「要求の実現」、「回避」、「注目」、「感覚刺激」のいくつか、またはどれか一つであることがわかり、「強化」と「消去」を応用し対処出来れば何よりです。しかし、そううまくいくとは限らないこともあるでしょう。そんな時のためのDROです。

 問題行動を他の行動に置き換えるのです。例えば、ごはんの時にじっとしていられずテーブルを離れ、お茶碗を手に持ち歩きながら食べるお子さんがいるとします。座っているのが苦痛で歩き回っていたいという要求の実現かもしれませんし、テーブルからの逃避かもしれません。家族の注目を浴びたい、歩き回ることが快感であることもあり得ます。知らんぷりしてテーブルに戻ってきたらほめることを心がけるにしても、改善はなく毎日それが繰り返されるのであればDROを試みましょう。

 まず、「家の中を歩き回って食べる」を、「居間と台所を行ったり来たりして食べる」に置き換えます。それが出来ればほめて、「居間と台所の間の本人の好きな場所にじっと立って食べる」、次に「その場所に座って食べる」、「座る場所を毎日少しずつテーブルに近づける」、そんなやり方はどうでしょうか。かなり根気のいる作業となりますが、冗談半分のつもりで、出来なくて当たり前ぐらいに楽しみながら向き合うといいかもしれません。何事もチャレンジです。

 

③ して欲しくないことはさせない工夫

 これも割と難しい。して欲しくない行動に対してはあらかじめ予告し、時間の制限を伝えたり、その行動が出来ない状況を事前につくってしまう、といった工夫です。こちらからすべきことを明確に指示する、二つ三つの行動を提案し、子どもに選択させるのもいいでしょう。「~したら、~できる」という取り決めも有効な手段です。子どもと駆け引きをするようなものですが、子どもの興味の度合いを知った上での選択であれば、子どもの気持ちを十分に尊重したやり方です。頭ごなしに「ダメ」と云われるより、子どもは自分の存在が認められていると感じると思います。

④ 罰

 行動の後に不快感を与えることが罰です。不快な感情を抱けば行動が消去されるのは確かです。しかし、好ましいやり方とは思えません。

 数十年前までの日本の学校現場では、問題行動を起こした子どもは頬や頭を殴られたり(ビンタ、ゲンコツ)、廊下に立たされたり給食抜き、などということがあたりまえでした。何かというと体罰の時代。現代では許されないことです。

 この10年ほどの間に、発達障がいとされる子どもは随分と増えてきたと云われています。一方で、実質的な割合は昔と変わっていないという話も聞かれます。私の小学校時代にも、「こいつなんか変わってんなあ・・・」という同級生は何人かおりました。おそらくは、私もその一人であったと思います。「佐久間くんはどーしてそんなことばかりするの!」と、教師からのダメ出しの日々でした(笑)。

 ここからは私の勝手な憶測です。昔であれば、集団生活に適応出来ない「外れた」子どもたちのほとんどは、罰で支配されていたのではないでしょうか。罰を受け続けるうち、子どもは行動する意欲を失い、悪い面ばかりでなくいい面も含め、かけがえのない特性を失っていったのです(私のように、発達障がいの特性を持ちつつも、成長過程においてなんとか社会性を身につけ大人になったケースもおります。そういう大人も実は多いのです)。

 罰を与えることは、大人が満足するだけのことです。子どもにとっては何の利益もありません。罰を繰り返すうちにエスカレートすることもあり得ます。それはもう虐待です。また、罰が「注目」となり、かえって問題行動が強化されることもあるでしょう。

 罰は用いない支援が賢明です。

「知らんぷり」や「DRO」などの対処法は、行動分析学にもとづく応用行動分析(Applied Behavior Analysis:ABA)の技法として知られています(ページトップの提示文献6参照)。

 頭では理解出来ても、実践は中々に難しい面はあります。1回でうまくとは限りません。むしろ、1回でうまくいかせようなどと考えない方がいいでしょう。何回も失敗を繰り返し、そうのうちに少しづつうまくいくようになればいい。そんな気持ちで取り組んでいただければと思います。

 実際には「知らんぷり」と「ほめる」の使い分けが難しいとされるところです。それについては、「ペアレント・トレーニング」といった子育て支援プログラムでも取り上げられています。保護者の自己トレーニングのために有用です。

ペアレント・トレーニング

現在作成中。

 

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支援なき診断は無意味

 発達障がいでは、早い時期からの医療的な介入や、適切な療育方針や態勢の確立が重要となります。医療的介入の第一歩として、きちんとした診断をつけることが挙げられます。
 診断名、重症度が把握されることにより、子どもさんそれぞれの特性に合わせた対応が可能となります。
 また、診断を受けることにより、療育手帳などの福祉サービスが受けられる場合もあります。保育園では、その子のための支援員などの人的援助が受けられたり、学校では特別支援学級の設置が可能になることもあります。

 診断は、児童精神科医や心療内科小児科医などの専門家により成されますが、子どもさんの保護者(多くの場合ご両親、ご両親のいずれか)が、診察や検査を受けることさえ拒まれることがあります。
 言葉では表わせない、いろいろな想いがあるかと存じます。
 しかし、レッテルを貼るだけが医療の目的ではありません。子どもさんにとってのよりよき環境をつくるための、大切なステップとお考えいただければと思います。

 ただ、残念なことに。
 診断がついても、その後の療育や保育についての適切なアドバイスが成されないケースが少なからずあります。発達を支援する専門施設に関われればいいのですが、それさえもなく、保護者もどうしたらいいかわからず右往左往している状況。そのような時こそ、地域の医療機関や行政がしっかりとした方向づけのお手伝いを心がけたいものです。

 それ以上に困るのが、軽度発達障がいにありがちな、症状が軽度、それでも保育園や幼稚園、学校での集団生活に差し障りがある場合です。診察や検査を受けても、「・・・の疑い」病名しか下されない、具体的な(対応に関しての)アドバイスもなく、「しばらく様子を観てください」としか伝えられなければ、保護者も、園や学校も困り果てるしかありません。「何の様子を、どのように観ていけばいいのか」と。
 診断をつけたのならもちろんのこと、診断がつけられない状況でも、その子どもさんに対してどのような対応、どのような発達支援をすべきかを、しっかりと提示・アドバイスしていくべきでしょう。

 言い換えれば。
(やや言い過ぎの感があるにしても)支援がきちんと成され、子どもさんの発育に適切な環境が整えられるのであれば、診断名などどうでもいい、ということにさえなります。
 自閉スペクトラム症であれ、注意欠如・多動症であれ、必要とされる適切な支援の手を差し伸べることを最優先に考えるべきです。
診断をつけるだけで終わってはいけません。満足してはいけません。
子どもさんにとっての安心できる居場所づくりこそ、何より重視したいものです。

 支援のための診断なのです。
支援なき診断は無意味です。

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